デプロイとビルド、リリース|概要・それぞれの違いについて解説!

デプロイとビルド、リリース|概要・それぞれの違いについて解説!

アプリケーション開発において、正しい理解が必要とされるキーワードに「ビルド」「デプロイ」「リリース」が挙げられます。どれも開発の現場では耳にする機会が多いものであり、自然と利用できている人は多いでしょう。

必要不可欠な作業ではありますが、これらの意味合いを正確に理解して使い分けできていない人が見受けられます。これは大きな問題となりかねないため、この機会にビルド・デプロイ・リリースの意味合いや違いと、これから求められる自動化について理解を深めておきましょう。

ビルド・デプロイ・リリースの概要


最初に、ビルド・デプロイ・リリースの基本的な意味について解説します。

ビルド

ビルドとは、エンジニアが作成したソースコードをコンピュータが実行可能なソフトウェアやアプリケーションに変換する作業です。一般的には「コンパイル」と呼ばれる作業がビルドに該当します。ソースコードの状態では、パソコンが内容を理解して実行することはできないため、実行できるように変換するのです。

また、単純にソースコードを変換するだけではなく、利用しているライブラリを統合したり、内部的にテストしたりすることも含まれます。これらは、どのような仕組みでビルドしているかによって大きく変化する部分です。ライブラリを使っているならば、事前に統合して効率よく実行できるようにしなければなりません。

ビルドを実行することで、エンジニアが書いたソースコードが実際に動作するようになります。ソースコードが直接動作していると思われがちですが、記載にはビルドされたものが動作しているのです。

デプロイ

デプロイは、ビルドで生成されたソフトウェアやアプリケーションをユーザーがアクセスできる環境に配置することです。例えば、Webサーバーやアプリケーションサーバーに配置して実行できるようにします。この作業によって、エンドユーザーは新しい機能をテストしたりアプリケーションを活用したりできるのです。

なお、デプロイ作業ではビルドした結果をコピーするだけではなく、各種設定が含まれる可能性があります。例えば、環境変数を設定したり、アクセスするデータベースを作成したりするなどです。ソフトウェアやアプリケーションが正常に動作するために求められる作業は全てデプロイに含まれます。

リリース

リリースは、製品の新しいバージョンを、公式にエンドユーザーへと提供する作業です。デプロイでは、テストユーザーなど一部にしか公開されていない可能性がありますが、リリースになると全体に公開されます。これによって、ユーザーは、アプリケーションなどを利用できるようになります。

一般的にリリースまで進めてしまうと、何かしら問題があった際に後戻りできません。例えば、アプリケーションにバグが含まれていて、画面表示できない状態でリリースしてしまうと、ユーザーから大量の問い合わせが来る可能性があります。

もし、リリース後に大きな問題が起きると、問い合わせ対応などに大きな時間を割くでしょう。単純な対応だけではなく、バグの修正やテストの実施、類似の問題が存在しないかの確認など多くの作業が必要となります。

コラム:コンパイルの概要と違い

今回、主に扱う話題ではありませんが、アプリケーション開発に関連するキーワードとしてコンパイルがあります。これも混同されやすいものであるため、今回は理解を深めていきましょう。

コンパイルとは

コンパイルとは、プログラムをコンピュータが理解できる形式に変換することを指します。コンピュータはプログラミング言語をそのまま理解していると思われがちですが、実際にはそうではありません。プログラミング言語から「機械語」と呼ばれるものを生成して、それを実行しているのです。プログラミング言語から機械語を生成する作業が概ねコンパイルであると理解しましょう。

アセンブリが利用される場合も

コンピュータは、そもそもアセンブリと呼ばれる言語を利用していて、これは人間が簡単に理解できるものではありません。そこで、人間でもプログラミングしやすくするために、現在のようなプログラミング言語が開発されました。いくつかの過程を経て、今のようなプログラミングが実現できる状態になると考えておけば良いでしょう。

なお、アセンブリを機械語に変換する作業は「アセンブラ」と呼ばれ、これはコンパイルとは異なっています。コンパイルは大半のプログラミングを機械語に変換する作業ですが、アセンブリは違うため正しく理解することが大切です。

ビルド・デプロイ・リリースの違い


上記ではそれぞれがどのような作業であるかを説明しました。続いては、作業内容を踏まえて、これらにどのような違いがあるか解説していきます。

作業目的

ソフトウェアを生成するか使用可能な状態にするかという観点で、これらの作業目的には大きな違いがあります。

まず、ビルドはソースコードから実行可能なソフトウェアを生成する作業です。コンパイルを中心に依存関係の解決やアーティファクトの生成などに対応しなければなりません。ビルドしなければ、プログラムを実装してもコンピュータが実行できることはないのです。

それに対して、デプロイやリリースは、エンドユーザーなどが利用できるようにする作業を指します。一般的に、デプロイはテストユーザーが利用できる状態で、リリースは全てのユーザーが利用できる状態です。公開される範囲は異なりますが、ビルドされたソースコードを配置する作業といえます。必要に応じて、環境変数の設定などの作業も含まれますが、ビルドとは大きく作業目的が違うと理解しておいて良いでしょう。

作業関係者

それぞれの工程において、関係する作業担当者に違いがあります。

まず、ビルドはソースコードからソフトウェアを生成する作業であるため、主にエンジニアが担当する範囲です。プログラマーを中心に、インフラ関係やデータベースなどのエンジニアも関わり、ビルドを進めます。ソースコードの実装はプログラマーであるため、概ねプログラマーの作業と認識して良いでしょう。

続いて、デプロイはビルドされたソフトウェアを配置したり実行したりしなければなりません。そのため、プログラマーだけではなく、サーバーなどの運用チーム、データベースやデータベースの管理者なども関わる作業です。場合によっては、デプロイしたソフトウェアを運用チームが管理しなければならないため、関係者がアサインされます。

最後に、リリースではプログラマーやエンジニアに加えて、マネージャーやマーケティングチームが加わる可能性があります。最終的なリリースの判断は、マネージャーが下さなければならないため、意外にもマネージャーは必須です。また、リリースされると同時に、市場へ展開することも考えられるため、マーケティングチームの担当者もリリースに関わるという違いがあります。

デプロイを実現する2つの手法

一般的なデプロイでは、システムを停止してアプリケーションを差し替える作業が必要です。そのためダウンタイムが発生し、ユーザーへ影響を与えかねません。このダウンタイムを最小限に抑えるための手法について解説します。

ブルーグリーンデプロイメント

日頃から利用される本番環境とは別に「グリーン」と呼ばれる新しい本番環境を準備し、そこで本番リリースを進める手法です。問題なくリリースが完了した後は、ロードバランサーの設定を変更し、新しい本番環境へと通信させるようにします。そのため、ロードバランサーの切り替えによるダウンタイムが一瞬発生しますが、ほぼダウンタイムなくアプリケーションをデプロイできるのです。

ただ、リリースにあたっては、両方の環境を運用しなければならないため、コストが発生します。また、アプリケーションによってはデータベース整合性などの問題から、このようなデプロイでは運用が難しいこともあるでしょう。理想的な手法ではありますが、現実的に採用できるかどうかの検討が必要です。

ダブルデプロイメント

上記と似た考え方ですが、こちらは古いサーバーを残さず移行が完了した段階で環境を破壊する手法です。運用するサーバーの数が少なくなるため、コストを抑えられることがメリットです。

ただし、システムが正常にデプロイできたタイミングで、環境を破壊するため問題が起こった際に後戻りできません。見切り発車の場合など、何かしら問題が起きる可能性があるならば、あまり適した手法とは言えないでしょう。

今後求められるデプロイの自動化


解説したように、エンジニアが実装したプログラムは、デプロイすることによってユーザーが操作できるようになります。そのため、運用効率の高さを意識するならば、デプロイ作業は自動化した方が良いでしょう。人間の手を介さずにデプロイできる仕組みを作れば、実装されたプログラムを素早く実行できるようになるのです。

デプロイを自動化するツールは、様々なベンダーから提供されています。どのような環境にデプロイするかを踏まえて、ツールを選択すると良いでしょう。例えば、クラウド環境であるAWSにデプロイするならば、AWSが提供するツールが高い親和性を持ちます。

なお、デプロイを自動化することは、ビルドやリリースの自動化にもつながります。人的なミスを減らす方法でもあるため、今後は積極的に導入されるようになっていくでしょう。ツールを利用するためには、ビルド・デプロイ・リリースの違いを理解する必要があるため、この機会に新しい知識を持つべきです。

ビルド・デプロイ・リリースの自動化における注意点

解説したように、これからの時代はデプロイの自動化が進むと考えられます。また、その影響を受けて前後の作業であるビルドやリリースについても自動化されると考えて良いでしょう。ただ、ここで注意すべきポイントもあるため、その点について解説します。

全てを自動化に対応させる必要がある

デプロイやリリースを自動化したいならば、すべてのリソースを自動化に対応させなければなりません。例えば、プログラムのビルドは自動化できても、データベースのデプロイが自動化できなければ意味がないのです。この場合、データベースは人間が事前に作成しておくなどの対応が求められます。

このような人的な作業が含まれると、ミスが発生する原因となりかねません。また、プログラムのデプロイにあたって、作業漏れが発生する原因ともなってしまいます。デプロイの自動化を目指すならば、データベースやネットワーク、各種コンフィグの設定などすべてを対応させるべきです。

複雑になりすぎる可能性がある

開発したアプリケーションやシステムが複雑であると、自動化作業が複雑になりすぎる可能性があります。例えば「最初にAグループをビルドしその後にBグループをビルド、その後にCデータベースをデプロイしてビルドしたプログラムもデプロイする」などです。自動化する対象が増えれば増えるほど、複雑になってしまうことがリスクなのです。

特に注意しなければならないのは、前後関係を意識しなければならない場合です。例で挙げたように、事前に別のプログラムをビルドしておかなければ、他のプログラムがビルドできないことがあり得ます。自動化においては、このような前後関係を考慮しなければならないのです。

ただ、言い換えるならば事前に自動化を設定することで、このような前後関係をミスなく実行できるようになります。人間が複雑なビルドやデプロイを担当すると間違える可能性がありますが、自動化すればその心配はありません。事前の設定こそ複雑にはなりますが、一定のメリットはあると考えられます。

まとめ

間違える人が多く見受けられる、ビルド・デプロイ・リリースについて解説しました。これらは関連する一連の作業であり、それぞれについて正しく理解することが重要です。誤った認識を持っていると、エンジニアなどとコミュニケーションを取るにあたって、認識齟齬が生じてしまうかもしれません。

また、それぞれの作業について理解するだけではなく、間違いや自動化についても理解することが重要です。近年は、一連の作業を自動化して、人間による誤りを防ぐ仕組みが注目されています。これからは、このような仕組みがさらに使われると思われるため、この機会に理解を深めておきましょう。

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admin